リア充という特権階級 第四話(秘書アバターのいる仕事風景)

秘書アバターという自分専用のチャットボットが、他の人の秘書アバターと連携したら、人間が調整をやらなくてもいい世界になるかもしれないという話です

 

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一緒に製品の企画をしているコウスケのアンドロイドから早い時間に打ち合わせをしたいと打診をうけていたマオが、朝10時からの別のミーティングをリスケして、コウスケとのミーティングを入れた。この1週間は、コウスケとのプロジェクトが最優先だと伝えてあるため、マオも予定を調整できる限り、コウスケとの予定を優先する。

会議室につくなりコウスケは、アンドロイドを経由した問い合わせシステムを開発してほしいと言ってきた。ユーザからのコーヒー豆のオーダーを会社のアンドロイドが受け、そのアンドロイドがコーヒー豆の納期調整をしてユーザに伝えるというシステムを作りたいということだ。

コウスケと一緒に開発しているのは、コーヒーメーカーだ。

焙煎職人の技をプログラムすることで、温度・湿度・豆の状態を自動で検知し豆を焙煎するコーヒーメーカーの開発。それを安く売り、メンテナンス料金と豆の流通で儲けるビジネスモデル。社長がコーヒー好きだったことから考えたアイデアだ。100億の予算を使ったビックプロジェクト。

コーヒーの味はデータ解析によって、焙煎時間、豆を保存する温度、グラインドする大きさによって、苦みや香りなど12のパラメータがほぼ再現できることがわかっている。

よいコーヒー豆は味をよく再現でき、当たりはずれが小さい。

ただ、焙煎してから時間をあけずグラインドしないと出せない香りがあったり、家で焙煎や保存を最適な状態でやるのはめんどくさいため、それをいかに楽に実現できるかが、コーヒーメーカーの腕の見せ所だ。

コウスケの考えるアイデアはコーヒー豆のオーダーから納品までをすべてアンドロイドでやってしまうというものだった。

コーヒー豆のオーダーが入ると、会社のアンドロイドがコーヒー輸入業者のアンドロイドへ問い合わせる。輸入業者のアンドロイドによって在庫が確認され、早く納品できそうであれば、アンドロイドが納品日を返す。

在庫がない場合、ブラジルの農園のアンドロイドへ、通常の船便でなく、航空便で

コーヒー豆を送るようにオーダーする。ブラジルのアンドロイドは、工場へ航空便で発送するよう指示をする。工場のアンドロイドは、配送業者のアンドロイドへ明日の便で発送した場合に日本へいつ到着するかを問い合わせる。

配送業者のアンドロイドは、ブラジル国内の配達スケジュールを確認し日本にいつつくかを計算する。そして提携している日本の配送業者のアンドロイドへ日本についてからどのくらいで配達できるかを問い合わせる。

その回答を工場のアンドロイドへ返信し、そこからブラジル農園のアンドロイドへ伝わり、コーヒー豆の輸入業者へ伝わり、コーヒー豆の輸入業者は税関での手続き時間を含めて、ユーザーへ答えるシステムだ。

納期調整をアンドロイドで完結させることで、ユーザのオーダーへ1分以内で回答ができる。アキラは、ブラジル農園や配送業者のアンドロイドと連携して回答を出せるように、会社のアンドロイドを教育することになった。

リアルタイムの問い合わせにアンドロイドを対応させることは、意外と簡単にできた。ユーザが必要なコーヒー豆をどうやって特定するかも、コーヒーメーカーを購入する際に、ユーザのアンドロイドを登録してもらうため、ユーザのアンドロイドへ必要な豆の種類を聞くだけでよかった。

ユーザの好みを把握しているユーザのアンドロイドへいくつか質問することでコーヒー豆を特定するアルゴリズムも作ることができた。

毎回のコーヒーの出来は、コーヒーメーカが把握しているパラメータと、その時に気に入ったかどうかをアンドロイドが訊ねた結果を解析することで、ユーザの好みは間違いなくわかる。

また、コウスケにフェアユースをしているコーヒー農園へ、アンドロイドを提供しないかと提案してみた。ブラジルのコーヒー農園はまだ未発達な技術でビジネスをしているところが多く、アンドロイド環境がない農園があった。

コウスケは、CSRとしてそれをやろうと言い出した。

フェアユースをアンドロイドを提供することで応援することが、企業イメージを高めることになるという。相変わらず、ビジネスセンスのいいやつだと思った。