リア充という特権階級 リア充という特権階級 第三話(秘書アバターのある日常生活)

自分用の音声チャットボット(秘書アバター)と、音声で秘書アバターと会話するためのカムが実現したときのお話です。

----

アキラは電車の中で無性にドトールのコーヒーが飲みたくなった。カムのスイッチを入れて、ドトールでコーヒーとつぶやく。電車の中だが、声はキャンセラーで周りに聞こえないようかき消される。

カムから、いつもの場所でいつものやつでいいですか?と音声が聞こえる。ああ。と言うと、15分後にコーヒー濃い目、ミルク少な目で2階の窓際の奥の席をご用意しましたと、秘書アバターのマオの声が聞こえた。

駅につき、ドトールに入ると、マオは2回の窓際の一番右奥です。と言った。アキラは座って、淹れ立てのコーヒーをすすりながら、手帳を開いた。

1時間ほどドトールでコーヒーを飲みながら考え事をして、アキラは家に帰った。家の前で、トマトジュースというと、家の鍵が開く。トマトジュースという言葉と、アキラの声紋が扉を開ける鍵になる。もちろん、トマトジュースという言葉は、キャンセラーにかき消され、周りには聞こえない。

夕食を食べ終わると、マオが20時からの日韓戦見ますか?と聞いてきた。見ると言うと、部屋のカーテンが閉じられ、プロジェクターとスクリーンがセットされ、TVが映る。TVは全く見なくなったが、スポーツのリアルタイム観戦だけはTVで見ている。

テレビの規格が新しくなり、解像度の高い映像を受信しているため、岡崎ウォッチングというと、岡崎を追いかける映像がずっと映される。岡崎ばかりを見ていて、得点シーンを見逃してしまった。

日韓戦を見終わってコーヒーを飲んでいると、ユズルが4月分の収支を報告します。と言った。ユズルは、財務の秘書アバターで、お金を預けている銀行が提供してくれている。カムの中には、4人の秘書アバターがいる。

マオは生活全般の秘書で、僕の好みを理解して色んな場面でリコメンドしてくれる。スケジュール管理やお店の予約もしてくれる。

ユズルはお金をの管理をやってくれていて、銀行のサーバにデータがあり、かなり手厚く情報が守られている。

ミキは健康管理アバターで、体に着けている生体情報取得装置やトイレの中のセンサーからデータを取得し、健康状態を見張っている。タバコの数やお酒の量も見張っていて、酔っ払ってくると、あと一杯にしてくださいといってくる。あと、万が一のときは、救急車を自動で呼ぶ権限を持っていて、この機能のお陰で心臓発作で亡くなる人が減ったらしい。

4人目のアバターはノブナリで、ココロの健康管理をしてくれている。元気がないと、くだらないギャグを言ったり、zardの負けないでを歌い始めたり、エロい画像を出してきたり、非常にやっかいだ。でも、たまに救われる。

ユズルの報告によると、今月の収入は100万円らしい。生活費が50万円で、残りはクロアチア国債として貯金する予定だがそれでよいか聞いてきた。

ノブナリが貯金せずに、パーっと使ってしまいましょう!モナコにF1でも観にいきませんか?と言う。ミキが、心拍数が上がりました。旦那様はお怒りです。とそっけなく言う。ユズルは、クロアチアは今安くて買っておくべきではと言う。まるで、自分の中の天使と悪魔が戦っているかのように、それぞれが自分の気持ちを代弁する。

マオが、旦那様は来月スケジュールに空きがありませんので、貯金がよいかとと伝えた。僕はそうしようと言った。